7/27(木)、都内の稽古場でリクウズルーム×努力クラブ「飾『Are you wearing clothes?』」公開稽古を実施しました。
稽古後、ゲストにカゲヤマ気象台さん、そして急遽見学にいらしていた黒田瑞仁さんをお迎えし、演出家2名とトークを繰り広げました。「とにかく笑った。面白かった!」と笑顔で話して下さったお二人は、Skypeを用いて合田団地さんと佐々木透が共同創作した戯曲に、興味津々の様子。
ご観劇前に、ぜひご一読ください。
ーーー今回の作品創作について
カゲヤマ気象台(sons wo:):
テキストは、最初ある程度話し合いをして書き始めたんですか?
合田団地(努力クラブ):
「こういう結末にしましょう」という到達目標を決めて、場面ごとに区切って2人で書いた。内容については特に決めなかったが、思い通りの結末にはならなかったことも。
カゲヤマ:
失敗はあることだし、試み甲斐があること。失敗することには興味がある。
黒田瑞仁(ゲッコーパレード):
「ここまで書いたけど、やっぱり辞めましょう、この地点まで戻って書き直しましょう」みたいなの事はあったんですか?
佐々木透(リクウズルーム):
それをやると前に進めなくなるから、やりませんでしたね。
合田:
このセリフはどういう意味ですか?と質問することはありました。
黒田:
「ここでこの場面が終わる」といった判断は、どのようにしたのでしょうか?
佐々木:
続けようと思えば延々と続けられるので…(笑)
はい、終わりましょう!といって終わらせた。
ーーー作品の手応えについて
佐々木:今回は合田君のやり方を尊重しました。「郷に入れば郷に従え」みたいな感じ、外国でその国の慣習に従い身をまかせるような感覚で。共同作業は、楽しかったです。
合田:
作品が面白いかどうか、いまだに不安。佐々木さんの書く事は、文字情報だけだと何を狙って書いているのか分からなかった。
カゲヤマ:
実際見ましたが、2人で作ることによるチグハグさは特に感じませんでした。
黒田:
とにかく笑いながら見ていたけれど、書いた時点で狙っていた笑いだけではなかったんじゃないでしょうか?スムーズに執筆が進んでいた場合、そこに可笑しみは生まれなかったのでは?とも思った部分もあった。
2人で書いていくうちに、当初目指していたのと違う方向に行ってしまった…というウネリが見えて面白かった。
佐々木:
合田君は、笑いについては敏感にシュミレートしてコントロールして書いていましたね。
もちろん、自分も初めてだから、分からなくて不安。
しかし、分からないことに対して手を伸ばしたい、という思いが強い。
ーーー「2人で」書いた戯曲について
カゲヤマ:
2人による共作だが、”戯曲”という同じフォーマット内での共作ではありますよね。脚本があり、演出家がいて、俳優がいる、という関係性は固定化されていて、その三者の構造はしっかりとして見えた。ジャンル横断といったものではなく、脚本が脚本としてある、というのを感じましたね。
黒田:
脚本に二人の要素が入り組んでいたときに、普段よりも「(二人を知っている)役者がなんとかしなきゃいけない、どうにか成立させなきゃ」という状況になったのではないか、と推測するのですが、どうでしょうか?
(客席から)兵藤公美:
そうです。
合田:
当初、演出家が2人いて、それぞれ目指す場所が違うなんて、絶対うまく行かないのではないか思った。俳優は、誰を信じれば良いの?となるはず、と。
佐々木:
合田君が思った以上に細かい指示をする人だったので、、であれば、逆に彼の好きな部分は任せるようにしたので、案外楽でした。
カゲヤマ:
舞台美術などはどうするんですか?
佐々木:
合田君が、「美術については分かりません」と言って、お任せする姿勢だったので(笑)、僕がそっちを担当するという感じになりました。
兵藤:
2人の興味が全然違うんです。
シーンごとに演出担当が分かれていて、それぞれ担当と作るので、そんなに不具合みたいなものはなかったと思う。
「どっちの意見聞けば良いの?」みたいな局面はありませんでした。
何を大事にしようとしているか、面白いと思っているか、全然違っても一つの作品を作ることができる現場だなと思いました。
ーーーー”分からないこと”について
合田:
佐々木さんと僕の共通項は、アナーキーであること。
それを見つけられたので安心しました。
人殺して笑ってるところとか(笑)
佐々木:
合田君は書いてるとすぐ、人殺すんですよ!
皆さんは、”分からない”という事に対して、どんな感性を持っていますか?
カゲヤマ:
努力クラブは、いつも同じ劇団員や俳優とやるそうですが、僕の場合(sons wo:)は誰かしら座組の中に初めましての人がいるので、同じ人たちとずっとやっていく、という感覚が分からないんですよね。
佐々木:
リクウズルームもそう。
でも演劇って、1-2ヶ月の間、初めての人とも近い距離感の中で話し合ってお互い近付こうという努力をする。演劇をやる事で、相手を理解する力はつくんじゃないか?こういった事が例えば、諸外国との理解、世界平和に繋がっていけばいいなと思う。
黒田:
僕はゲッコーパレードという団体で演出していますが、他のジャンルのアーティストと一緒に作業する事が多いんです。演劇に関わったことのない、現代アートの作家とか。
そうすると、自分が相手にやって欲しいと思っていた事と違う事を始めるのはある意味当たり前です。
例えば、その現代アーティストは、インスタレーションをやる人かと思っていたら、実は3次元で絵画的な表現をしたい人だというのが3回目の共作でようやく分かったり。
ある意味、分かり合えないんですよ。でも、その分野に関しては専門家(現代アーティスト)を信頼するしかないし、自分は演出家としてそれらを組み合わせて作品にする責任がある。
話し合うけど分かり合えないことはある、でもそれぞれの事をやるしかない。みたいな感じで僕はやっていますね。
合田:
自分を深めていく作業をしていくときに、一人では気付けない事がある。掘り下げて行くのにもエネルギーがいる。他人と会話がままらないときは、逃げ道として自分のことを掘り下げる。他人と会うのは、面倒くさいけど、面白いと思う。
佐々木:
僕が話しかけた時も、最初はメチャメチャ警戒されたよね(笑)
でも、やっていくうちに、ちょっと分かるかな?という瞬間がある。それが僕がやりたいこと。
カゲヤマ:
この作品も、分かってる風になってるけど、実は分かり合えてない部分がすごく多いですよね(笑) それが今回の作品の面白さだと思いますね。
(了)
リクウズルーム×努力クラブ
合同公演 飾『Are you wearing clothes?』
8月5日(土)〜13日(日) 於 こまばアゴラ劇場